2026/10/16 15:15

太平洋から吹きつける風のなか、海辺の崖に、明日葉が青々と葉を広げています。遠く離れた地中海の丘では、乾いた風に吹かれながら、オリーブの樹が銀色がかった葉をきらめかせています。
生まれた土地も、草と樹という姿もちがう、ふたつの植物。けれども、強い日差しの下で育つという点では、よく似た暮らしをしてきました。この記事では、ASEAVEの原料になっている明日葉とオリーブの葉について、それぞれのふるさとをたずねてみます。
海辺の崖で育つ、日本生まれの明日葉

明日葉(アシタバ)は、セリ科の植物です。日本原産で、関東の南部から紀伊半島にかけての太平洋沿岸や、伊豆諸島、小笠原の海辺に自生しています。
潮風が吹きつけ、日差しをさえぎるもののない海辺の崖地。ほかの植物にとっては楽ではない場所で、明日葉は大きな葉を何枚も広げ、たくましく育っていきます。
なかでも八丈島には明日葉が多く、「ハチジョウソウ(八丈草)」という別名があるほどです。伊豆諸島は東京都に属していますから、明日葉は、東京の島で育つ野菜でもあります。いまも伊豆諸島は明日葉のおもな産地で、明日葉は一年を通して出回ります。春の3月から5月ごろには、やわらかな新芽が多く市場に並び、島に春の訪れを告げてくれます。
若い葉には少し苦みがありますが、セロリのように食べられます。さっとゆでると、緑がいっそう鮮やかになり、青々とした香りが立ちのぼります。海辺の崖でたくましく育つ姿と、食卓での親しみやすさ。その両方をもっているのが、明日葉という植物です。
「今日摘んでも、明日には芽が出る」

「今日摘んでも、明日には新しい芽が出る」。明日葉という名前は、それほど強い生命力に由来するといわれています。摘んでも摘んでも、また芽を出す草です。
八丈島では、江戸時代ごろから、明日葉を野菜として食べてきました。作物が育たない飢饉の年には、人びとの暮らしを支える大切な食べものにもなったと伝えられています。
いまでも島では、明日葉の天ぷらや、岩のりと合わせた酢のもの、生地に明日葉を練り込んだそばなど、明日葉を使った料理が親しまれています。ほろ苦さと青々とした香りは、島の食卓に欠かせない味です。
明日葉の茎を切ると、切り口から黄色い汁がにじみ出てきます。この色のもとは「カルコン」と呼ばれる成分のなかまで、明日葉を特徴づけるもののひとつです。カルコンについては、次の記事でくわしくご紹介します。
地中海の太陽と、葉を落とさない樹

オリーブは、地中海沿岸の、強い日差しと乾いた風のなかで育つ樹です。一年を通して葉を落とさない常緑樹で、細長い葉の裏は銀色がかって見えます。
オリーブと聞くと、実やオイルを思い浮かべる方が多いかもしれません。けれども、雨の少ない夏も、照りつける太陽の下でも、樹の暮らしを支えているのは、一年中枝についている葉です。オリーブは、きびしい季節にも青々とした葉を保ちつづけます。
日本にオリーブがやってきたのは、明治の終わりごろのことです。1908年(明治41年)、三重・香川・鹿児島の3県で試作が始まり、栽培に成功したのは香川県の小豆島だけでした。地中海から遠く離れた瀬戸内の島で、オリーブは少しずつ根づいていきました。海を越えてやってきた樹が、日本の風景の一部になっていったのです。
強い日差しのなかで、自分を守るちから

明日葉とオリーブには、共通点があります。どちらも、日差しをさえぎるもののない場所で、強い紫外線を浴びながら育つ植物だということです。
植物は、動物のように日かげへ逃げることができません。そこで明日葉は、紫外線で自分の細胞が傷つかないように、ポリフェノールなどの成分を自ら作り出しています。オリーブの葉も、強い日差しと乾燥のなかで自分の身を守るために、オレウロペインというポリフェノールを作り出しています。
おもしろいのは、ふたつの植物の生き方のちがいです。明日葉は、摘まれても、すぐに次の芽を出します。新しい葉をどんどん生み出すことで、きびしい海辺を生きぬいてきた草です。一方のオリーブは、一枚一枚の葉を長く枝にとどめ、季節が変わっても青々とした姿を保ちます。すばやく芽吹く草と、じっくり葉を守りつづける樹。同じ強い日差しのもとで、まったくちがうやり方を選んできたのです。
明日葉の黄色い汁も、オリーブの葉にふくまれる成分も、きびしい環境を生きぬくための、植物自身の知恵といえるかもしれません。それぞれの土地で育まれた、葉の強さがそこにあります。
東洋の草と西洋の樹を、ひとつに

摘んでもまた芽を出す明日葉は「再生」の草。何百年も葉を落とさずに実をつけるオリーブは「不屈の樹」。ASEAVEは、ふたつの植物をそんなふうにとらえています。
東洋の海辺で育つ草と、西洋の丘で育つ樹。生まれた場所も姿もちがいますが、どちらも、きびしい環境が育てた生命力をもっています。その明日葉とオリーブの葉を、粉末にしてひとつにしたのが、ASEAVEです。
原材料は、明日葉とオリーブ葉の粉末の2つだけ。たくさんの素材を少しずつ合わせるのではなく、ふたつの葉にしぼっています。すばやく芽吹く東洋の草と、葉を守りつづける西洋の樹。性格のちがうふたつの葉を組み合わせることに、ASEAVEの考え方があらわれています。
粉末を水やぬるま湯に溶かすと、明日葉らしい青々とした緑が広がります。毎日の一杯を手にとるとき、遠い海辺の崖と地中海の丘の風景を、少しだけ思い浮かべてみてください。
次の記事では、明日葉とオリーブの葉にふくまれる成分と、これまでに進められてきた研究についてご紹介します。
次に読みたい記事
出典・参考
・日本大百科全書(ニッポニカ)・世界大百科事典「アシタバ」(コトバンク)
・農林水産省 東海農政局「東海の和食」第80号(2024年)
・東京都農林総合研究センター 研究報告(2008年)
・東京都「Marvelous Foods in the Islands of Tokyo」
・香川県「香川のオリーブ」
・株式会社ASEAVE 資料